アリーナの無茶修行(旅立ち)

風鴇能太


 蹴破った壁から屋根を伝って城を脱け出したアリーナだったが、サランの町に着く前に、追ってきたクリフトとブライにつかまってしまった。
「姫様、どこへ行かれるおつもりですか」
「まったく、姫様のじゃじゃ馬ぶりには爺も泣かされます。これからはお付きの侍女を増やして、常に監視させていただきますぞ」
 ちょっと気分転換のつもりで出てきただけだったけれど――侍女に監視されては二度と脱け出せないかもしれない。憧れていた武者修行の旅に出る、これが最後のチャンスだ。
「いやよ、帰らないわ。修行を積んで、この国一番の武術家を目指すのよ」
 言い争っているところへ、2匹のキリキリバッタが現われた。
「困った姫様ですね。それほどおっしゃるなら、腕前のほどを見せていただきましょうか」
 クリフトとブライは、アリーナからはなれた。
「よく見てなさい」
 アリーナの攻撃。キリキリバッタAにダメージを与えた。
 キリキリバッタAの攻撃。アリーナはすばやくかわした。が、ローブの裾を踏んづけて転んでしまった。羽帽子がずれて、目をふさがれた。
 キリキリバッタBの攻撃。アリーナはダメージを受けた。
 アリーナは羽帽子を脱ぎ捨てて立ち上がった。アリーナの攻撃。キリキリバッタAをたおした。
 キリキリバッタBの攻撃。アリーナはダメージを受けた。
 アリーナの攻撃。またローブの裾が邪魔をして、回し蹴りは外れてしまった。
 アリーナはさらに2ターンをかけてモンスターを片付けたが、HPも半分になっていた。
「ザコ2匹を相手に5ターンですか。そんな腕で武者修行とはあきれましたね」
 クリフトがため息をついた。
 いつもは気弱なクリフトに馬鹿にされて、アリーナは怒った。
「神官のあなたに、あれこれ言われる筋合いじゃないわ」
「神官でも、必要があれば闘います。すくなくとも、今の姫様よりは私のほうが強いですよ」
「まさか……」
「困った姫様ですね。身の程を教えてさしあげましょう。おっと、そのまえに――ホイミ」
 アリーナは回復した。
 クリフトが現われた。クリフトは棍棒を投げ捨てた。
「今の姫様には素手でじゅうぶん。かかってらっしゃい」
 アリーナはとまどっている。
「こなければ、こちらから行きますよ」
 クリフトの攻撃。アリーナは吹っ飛んだ。アリーナは死んでしまった。
 ……意識を取り戻したアリーナは、自分が街道沿いの林の中にいることに気づいて驚いた。
「あれ、教会じゃない?」
「ザオラルで甦らせてあげたのです」
「ええーっ!」
 そんな高レベルの魔法をクリフトが使えるとは知らなかった。
「裏技を使えば、お城にいても経験値を積んでレベルを上げることはできます。ともかく、今の姫様のレベルでは、武者修行などとんでもない。さあ、お城へ戻りましょう。よろしければ、クリフトが鍛えてさしあげます」
「いやよ。変な裏技なんか使いたくない。モンスターをたおして、正々堂々とレベルアップします」
「わかりました。それほど姫様の決意が固いのでしたら、爺は止めません。ですが、お供はさせていただきますぞ」
「ブライ殿。姫様の気まぐれを真に受けてはいけません。絹のローブに羽帽子なんてチャラチャラした格好で、まともに闘えますか」
 アリーナは絹のローブを脱ぎ捨てた。短い胴着とタイツだけの姿になった。
「これなら文句はないでしょ」
 クリフトの不意打ち。
 アリーナはすばやく身をかわして反撃のかまえをとった。
「なるほど。すこしは格好がついてきましたね。では、このクリフトもお供しましょう」
 ただし闘いの手助けはしないと、クリフトが言った。高レベルの仲間に助けてもらうようでは、武者修行の意味がない。
 3人はサランの町へ向かって歩き始めた。
 3匹のスライムベスが現われた。
 アリーナは気負っていた。アリーナの先制攻撃。スライムベスAをたおした。
 スライムベスBの攻撃。アリーナはすばやく身をかわした。が、後ろ向きにスライムベスCにぶつかった。
 スライムベスCはアリーナを押しつぶした。
 アリーナはスライムベスCから這い出した。胴着が破れてしまった。右の乳房が剥き出しになった。
 アリーナの攻撃。会心の一撃。スライムベスCをたおした。
 スライムベスBは、アリーナのおっぱいぽろりに見とれている。
 アリーナの攻撃。会心の一撃。スライムベスBをたおした。
「レベル1で会心の一撃を連発とはお見事。身体の動きを制約する防具は、姫様には邪魔になるだけですね」
「裸で闘うなんて、いやよ」
「話はあとまわしですぞ。闘いの始末をつけなされ」
「え……?」
 モンスターは光り物が好きだから、たいていコインや宝物を隠し持っている。それを回収するのも闘いのうちだとブライに教えられた。あまり気は進まなかったが、アリーナはたおしたモンスターの死骸を探った。全部で5Gのコインを手に入れた。持ち歩いていては闘いの邪魔になると言われて、コインはブライに預けた。
 クリフトにホイミをかけてもらったが、破れた服は元に戻らない。破れ目を脇の下で結び合わせて、胸を隠した。



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